さぁ, そろばんの学習を始めましょう!
本来であれば, そろばんを実際に用意してもらってからこの説明をすべきだとは思いますが, 次の項からすぐに用語が登場してしまうため, 最初に部位の名称だけ説明してしまいたいと思います。
次の写真の 黄色の文字 の部分だけは絶対に覚えてください。他は, 豆知識程度の扱いで良いでしょう。
「けた」については, この写真だと縦に長く長方形で囲ってありますが, 正式にはその中心に走る縦の棒 (竹ひごのような木の棒) を指します。しかし, 大雑把にこの写真のような覚え方でよろしいかと思います。
留意点 子供に指導する場合, この名称を覚えるまで次に進ませない (そろばんに触らせない) というようなやり方だと嫌がることでしょう。まずはサラッと教えて次に進み, どうしても用語が頻繁に出てくるのでそのたびに確認してあげると, 自然と覚えられて良いと思います。
まずは, そろばんとえんぴつを用意してください。
「えんぴつ」というのはそのものズバリ「えんぴつ」であり, その他の例えばシャープペンシルは推奨しません。 理由として, 1 つには基本的にシャープペンシルは重たいので「持ち替え」が大変だということが上げられます。「持ち替え」というのはこのページの後半で登場します(注)。
もう 1 つには, シャープペンシルはえんぴつに比べて芯が折れやすく, 簿記や会計と同様消しゴムの使用も禁止ですし一字訂正 (たとえば 347 の 4 だけを 5 に訂正するような訂正方法) も認められていませんから, 途中で芯が折れただけでも答のすべてを書きなさなくてはならず, 特に制限時間を気にするようになると結構面倒なことになるということです。
他にも色々理由はありますが, どうしてもえんぴつが嫌だという方は, ロケットペンシルをお勧めします。
えんぴつは, 余り長いとそろばんに引っかかってしまうので, かなり使った短いものを用意できれば最高です。
注) この「持ち替え」という用語は, そろばんの専門用語ではありません。ここのサイトの主宰者が勝手に用いている用語です。ご了承ください。
「そろばん」は, 23 桁 (珠が横方向に 23 列並んでいる) のものが主流です(右写真)。 ほかに 27 桁ある「長尺」(ちょうじゃく)というものも存在しますし, 後ほど用語が出てきますが「ご破算」(ごわさん)する動作をワンタッチでできるような仕掛けがしてある「ワンタッチそろばん」というものも存在します。
これからそろばんを購入しようと考えている方は, ひとまず通常の 23 桁そろばんを用意すると良いでしょう。間違えても, 「練習用」などとうたわれている短いそろばんを購入しないでいただきたいと思います。
値段が色々あってわからない, という方。確かに 3,000 円程度のものから 10 万円(!) もするものまで多種多様ですが, 一番安いもの (3,000円程度のもの)で全然構いません (相当な実力にならなければ値段による違いは体感できません)。ただし, プラスチック珠(たま)だけはお勧めしません。樺(かば)珠でも柘植(つげ)珠でも構いませんから, 木の珠のものを使用することをお勧めします。そろばん教室で購入するならともかく, その辺の文具店では柘植珠は滅多にお目にかかれないかと思います。
なお, 樺珠とか柘植珠というのはそのまま使用している木の名称を指しており, 樺珠は通常(?)の焦げ茶色の珠で, 柘植珠というのは黄色い珠です。一般的には柘植珠の方が値段が高く, しかし見た目がケバく見えるかと思いますが, 使い込むとだんだんと黄色がくすんできて良い色になります。ここは完全に好みの問題です。
ちなみにマニアックな世界になると, 梅珠やら竹珠やら, 様々な木で作られた珠によるそろばんが存在します。木によって珠の色だけではなく弾いたときの音(音色!?)も異なります。しかし通常手に入れることは困難です。
この段落は「余談」です。
もしかすると, そろばんを購入するところでそろばんのお手入れ用品なんかも一緒に売っているかも知れません。売られていると買わなければならないのかと心配になるかと思いますが, 実際のところそろばんを入れるケース以外特に何も必要ありませんし, そもそも特段お手入れ自体必要ありません。
ただし, 先述のとおりそろばんは「木」で出来ていますから, 濡らすのは厳禁です。湿気にも弱いです。手汗など掻くと最悪です。ですから, もし手が汗っかきな方であれば, そろばんを使った後で必ずハンカチのようなものでそろばんを拭いてやる必要はあるかもしれません。そもそも手を拭ってからそろばんを弾くべきです。
万が一そろばんが湿気るとどのような症状が起きるかというと, そろばんの珠がまるで糊(のり)でくっついたようになることがあります。これは湿気意外に, 手垢などが細かい部分にたまることも考えられますが, 通常のそろばんの使い方をしている限り後者のようなことはあり得ないと考えてください。
えんぴつは利き手で持って構いませんが, そろばんは必ず右手で弾いてください。 これは, すぐに出てくる「くり上がり」や「くり下がり」の時に動作が逆になって大変だからです。
結果として, 左利きの方はそろばんが右で文字が左となりますので, 意外とスピーディーに答を記入することができます。左利きの高段者ともなれば, 左手で答を書きながら右手で次の問題を弾いてしまうくらいです。そろばんが動くだろうと思われますが, 文字を書いている左手の腕でそろばんの左側を押さえつけたりします。まぁこの話は, 相当弾くスピードが速くなってから気にすることですけれども。
そういうわけで, 左利きの方は右手には何も持たずにそろばんを弾きますが, 右利きの方は必ず「えんぴつを持ちながらそろばんを弾く」練習をします。これは, 答が算出されてからえんぴつを持つ, えんぴつを置いてからそろばんを弾く, という動作が無駄だからです。
これを可能にするのが, えんぴつの 持ち替え です。
下の写真を見ていただくのが手っ取り早いと思います。左写真は, 字を書く時のえんぴつの位置。当たり前の形ですよね。で, 右写真がそろばんを弾く時のえんぴつの位置です。つまり, えんぴつの先っぽが右側になるように握りしめながら, そろばんを弾きます。後に出てきますが, そろばんは親指と人差し指だけを使って弾きますので, この状態で良いのです。
では, この 2 つのえんぴつの位置をどのように変更するのか。それが, えんぴつの「持ち替え」です。要領は実際に見ていただくのが早いと思いますので, 次の動画をご覧ください。
注) 初級者で右利きの方で, どうしても「持ち替え」がうまく出来ない方は, ひとまず鉛筆は机上に置いた状態でそろばんを弾き, 答えを書くときにえんぴつを持つ形で学習を始めても良いと思います。スピードが上がってくるとそれでは間に合わなくなってくるので, それから「持ち替え」の練習をなさってもよろしいかと思います。
いよいよ実際に数値を置いてみます。
まず, そろばんに数値を置く準備をします。つまり, そろばん上の数値をゼロにリセットします。この作業を ご破算 と言います。
具体的には, そろばんを左手で持ち手前側に倒します。すると, 一だま, 五だま問わずすべてのたまが「下」側に落ちるでしょう。そのままそろばんを水平に戻し(机上に置く), 右手で五だまを左側から右側にスライドするような要領ですべて「上」側に戻します。このとき「下」にある五だまと「はり」の隙間に右手人差し指を入れるのですが, その爪の中央部分で五だまを上側に押しやるような指の形にする, つまり垂直よりも指の腹を多少こちら側に向けると, まっすぐ右にスライドするだけで爪の滑りにより勝手に五だまが上方向に移動するはずです。
具体的には, 次の動画をご覧ください。音が「静か」であることに注目です。 ガタガタと音がするのはよろしくありません。これは力を入れすぎているか, 下方向に力が加わりすぎているか, 爪の「先」で五だまを上に押しやろうとしているか, などの原因が考えられます。下手をすると, このガタガタという振動でキレイなゼロを保てなくなる, つまり一だまが完全に「下」, 五だまが完全に「上」の状態でいられなくなる可能性があるので要注意です。
留意点 そろばんを弾いている最中(このご破算の作業も)はずっと, 左手はそろばんの左側を持ち, 右手はすっとえんぴつを持ちっぱなしにするクセを付けて(付けさせて)ください。
いよいよそろばん上の数字の読み方です。このご破算で想像付くでしょうが, 一だまも五だまも「はり」の方向にある珠を「存在している数値」として認識します。ですから, 一だまが 1 つだけ「はり」の方にあり残りの 3 つが「はり」の逆の方向にあれば「1」を表します。五だまは 1 つしかありませんから, これが「はり」の方にあれば「5」を表します。
その際, 桁の基準として, 「はり」にいくつか付いている定位点を利用します。最初のうちは中央の定位点, もしくはその 3 桁右にある定位点を一の位として練習すると良いでしょう。一度決めたらしばらくずっとそのルールを自分のルールとして定着させてください。
一だまも五だまも, 「はり」の方向に珠を動かす(つまり「存在する」方向に動かす)ことを, 珠を 入れる, もしくは 置く といいます。逆方向へ動かす(つまり「存在しない」方向に動かす)ことを, 珠を 払う といいます。ちなみに, 置く動作や払う動作をまとめて, そろばんを 弾く といいます。
指使いは, 一だまを入れる場合は親指を使います。それ以外(一だまを払う, 五だまを入れる, 五だまを払う)はすべて人差し指を使います。
では, ご破算の状態から 1 桁の数値をそろばんに置き, そして置いた数値を払う(ゼロに戻す)動作を動画でご覧ください。この動画では, 中央の 3 桁右にある定位点を一の位と見立てて弾いています。
ポイントは 6 から 9 までの数値です。一だまも五だまも使うので, 親指で一だま を, 人差し指で五だまを同時に入れます。払う場合は, 間違えてもその逆の動作をしないでください。一本の人差し指で一だま, 五だまの順に払います。この様子も動画にてじっくりご覧いただければと思います。
留意点 先ほども述べましたが, そろばんを弾いている最中の左手の位置にご注意ください。あわせて, 右手には常に鉛筆を持った状態で弾いてください。動画ではお手本としてその辺りも意識して撮影しています。
さて, 1 桁の数字が置ければ 2 桁以上の数値も簡単に置くことができます。いま数値を置いた定位点のある桁を一の位とすると, その 1 桁左の桁が十の位, そのまた 1 桁左の桁が百の位……となります。
ポイントは, きちんと一の位(定位点)を把握し続けることです。例えば「30」がそろばんに置いてあるときに, 定位点を気にしなければそれは単なる「3」に見えることでしょう。
次の動画は, クイズ形式になっています。そろばんに置いている数値がいったいいくつを表しているか, 読み取ることができますか。光源の関係で定位点が見づらいかと思いまして, 一の位と見立てた定位点のみ, わざとらしく強調して表示しています。1 問ずつそろばんが表示されてから 5 秒後に正解が表示されるようになっていますから, チャレンジしてみてください。すぐに覚えられると思います。
最後に, そろばんがなくても紙の上で数値を読み, 数値を置く練習ができる問題集を用意しました。次のリンクをクリックすると, PDF ファイルを開きます。オフライン(この画面を見ることができないとき)でご利用の際は, ご家庭のプリンタで印刷してご利用ください。用紙サイズは A4(横)です。