大会に参加しよう

 そろばんの学習をしたなら, 大会に参加してみてはいかがでしょうか。大会に参加しようと思われたなら, 是非お近くの珠算塾(教室等)にお問い合わせください。

 このページの情報は北海道のものを基本としたものになっています。他地域の方も, 全国大会の情報は参考になるかと思います。

地方レベルの大会

加盟校珠算競技大会(札幌市,2 月)

主催:札幌珠算教育連盟

参加資格:札幌珠算教育連盟会員の指導している教場及び学校に所属している者

競技の種類:個人総合競技(かけ算,わり算,見取算,見取暗算),団体総合競技,種目別競技(読上暗算,読上算)

問題難易度(個人・団体総合競技):

高校生以上の部:全珠連検定 1 級を約 7 掛けの制限時間にて。

中学生の部:全珠連検定 2 級を約 7 掛けの制限時間にて。

小学校 5・6 年生の部:全珠連検定 3 級を約 7 掛けの制限時間にて。

小学校 3・4 年生の部:全珠連検定 6 級を約 7 掛けの制限時間にて。ただし見取暗算は 2 桁揃い 4 口。

小学校 2 年生以下の部:全珠連検定 8 級を約 7 掛けの制限時間にて。ただし見取暗算は 1 桁揃い 4 口。

道央珠算選手権大会道央地区各都市持ち回り7 月)

主催:(公社)全国珠算教育連盟 道央支部

参加資格:昨年度各部門優勝者(シード),道央支部各地区の予選通過者

競技の種類:個人総合競技(かけ算,わり算,見取算,かけ暗算,わり暗算,見取暗算),種目別競技(読上暗算,読上算,フラッシュ暗算)

問題難易度(個人総合競技):

高校生以上の部:全日本珠算選手権大会(全珠連)の問題

中学生の部:全日本珠算選手権大会(全珠連)の問題。

小学 5・6 年生の部:全珠連検定 1 級を半分の制限時間にて。

小学 4 年生以下の部:全珠連検定 3 級を半分の制限時間にて。

オホーツク支部珠算競技大会北見市,10 月)

主催:(公社)全国珠算教育連盟 オホーツク支部

参加資格:オホーツク支部会員の指導している教場及び学校に所属している者

競技の種類:個人総合競技(かけ算,わり算, 見取算,見取暗算),団体総合競技,種目別競技(読上暗算,読上算,フラッシュ暗算,応用計算

問題難易度(個人総合競技):

高校生以上の部:全日本通信珠算競技大会(全珠連)中学生以上の部の問題。

中学生の部:全日本通信珠算競技大会(全珠連)中学生以上の部の問題。

小学 5・6 年生の部:全日本通信珠算競技大会(全珠連)小学生以下の部の問題。

小学 4 年生以下の部:全日本通信珠算競技大会(全珠連)小学生以下の部の問題。

札幌市民珠算競技大会札幌市,12 月)

主催:札幌商工会議所/日本珠算連盟/札幌珠算教育連盟

参加資格:札幌市民及び札幌市内に勤務・通学する者

競技の種類:個人総合競技(かけ算,わり算, みとり暗算,みとり算),団体総合競技,種目別競技(読上暗算,読上算)

問題難易度(個人競技):全国そろばんコンクールの問題

小学校 1 年生以下の部,小学校 2 年生の部,小学校 3 年生の部,小学校 4 年生の部,小学校 5 年生の部,小学校 6 年生の部,中学校 1 年生の部,中学校 2 年生の部,中学校 3 年生の部,高校生の部,一般の部

全道レベルの大会

北海道珠算選手権大会札幌市 or 旭川市 or 帯広市1 月)

主催:全国珠算教育連盟 北海道地方連合会

参加資格:昨年度各部門優勝者(シード),各地域の予選通過者

競技の種類:個人総合競技(かけ算,わり算, 見取算,見取暗算),種目別競技(読上暗算,読上算,フラッシュ暗算)

問題難易度(個人総合競技):

高校生以上の部:全日本通信珠算競技大会(全珠連)中学生以上の部の問題

中学生の部:全日本通信珠算競技大会(全珠連)中学生以上の部の問題。

小学生以下の部:全日本通信珠算競技大会(全珠連)小学生以下の部の問題。

全道珠算競技大会各都市持ち回り9 月)

主催:北海道商工会議所連合会

参加資格:各都市予選通過者

競技の種類:団体競技,個人総合競技(かけ算,わり算, みとり暗算みとり算),種目別競技(読上暗算,読上算),都市対抗競技

問題難易度(個人総合競技):

一般の部:全国そろばんコンクールの後半半分の問題を半分の制限時間にて。

高校の部:全国そろばんコンクールの後半半分の問題を半分の制限時間にて。

中学校の部:全国そろばんコンクールの後半半分の問題を半分の制限時間にて。

小学校 5・6 年生の部:全国そろばんコンクールの前半半分の問題を半分の制限時間にて。

小学校 4 年生以下の部:全国そろばんコンクールの前半半分の問題を半分の制限時間にて。

全国レベルの大会

全国あんざんコンクール各教場等6~7 月)

主催:日本珠算連盟

参加資格:特になし

競技の種類:個人競技(かけ暗算,わり暗算, みとり暗算)

問題難易度(個人競技):全国あんざんコンクール専用問題

小学 1 年生以下の部,小学 2 年生の部,小学 3 年生の部,小学 4 年生の部,小学 5 年生の部,小学 6 年生の部,中学 1 年生の部,中学 2 年生の部,中学 3 年生の部,高校生の部,一般の部 I(50 歳未満),一般の部 II(50 歳以上)

全日本通信珠算選手権大会(各教場等,9~10 月)

主催:(公社) 全国珠算教育連盟

参加資格:特になし

競技の種類:個人競技(かけ暗算,わり暗算, 見取算,見取暗算)

問題難易度:全日本通信珠算選手権大会専用問題

一般の部,高等学校の部,中学校の部,小学校の部,小学 4 年生以下の部

全国そろばんコンクール(各教場等,1112 月)

主催:日本珠算連盟

参加資格:特になし

競技の種類:個人競技(かけ算,わり算, みとり暗算,みとり算)

問題難易度(個人競技):全国そろばんコンクール専用問題

小学 1 年生以下の部,小学 2 年生の部,小学 3 年生の部,小学 4 年生の部,小学 5 年生の部,小学 6 年生の部,中学 1 年生の部,中学 2 年生の部,中学 3 年生の部,高校生の部,一般の部 I(50 歳未満),一般の部 II(50 歳以上)

大会観戦レポート

第 36 回 北海道珠算選手権大会(2014/1/13,札幌市)

 2014 年 1 月 13 日(月), 全珠連主催の表記大会が行われました。

 各地域で行われた予選を勝ち上がった選手だけが出場できるこの大会。よって出場人数が増えたり減ったりはしないのですが, 逆にこの大会の成績によって北海道の選手のレベルがわかるということもあります。

 開催地が札幌のときにはしばらく北海道経済センターが利用されてきましたが, 今年は趣向を変えて定山渓グランドホテルにて行われました。こうして会場が変わることも, 選手の気持ちを変化させる効果を生み, 大会そのものを飽きの来ないものにすることに貢献しているように思います。

 さて, そんな今回の大会。どのような大会になったのでしょうか。早速レポートしてみます。


 問題は, 全日本通信珠算選手権大会のものを使用しています。

 まずは個人総合競技から。

 高校以上の部, 中学生の部が上位 20 名が入賞, 小学生の部が上位 30 名が入賞です。

 高校生以上の部は 2,000 点満点が 3 名。若松尚弘選手, 中村卓磨選手, そして工藤由季夫選手でした。入賞ラインが 1,850 点, こちらは例年並みでした。満点が 3 人というのは何年ぶりでしょうか。後述する同点決勝もなかなか熱いものとなりました。

 中学生の部は, トップが 1,970 点。こちらも 2 名おり, 同点決勝が行われました。入賞ラインは 1,630 点。こちらは例年になく高レベルであったと言えるでしょう。

 小学生以下の部はトップが 1,950 点, 入賞ラインが 1,460 点でした。こちらも僅かながらレベルアップしてきたと言えると思います。

 いずれにせよ, 北海道の選手層が徐々に厚くなってきたと言えるのではないでしょうか。トップレベルの選手がなかなか出てこないことはちょっと残念ですが, 珠算界全体としては良い傾向であるように思いました。


 次に部門別読上暗算競技です。

 ところで, 読上種目ですが, この会場は音響環境が大変良く, 非常に聞き取りやすかったです。読上暗算は超スピードで読むことはないので大して影響はないのですが, 読上算は開始前から好成績を期待していました。

 それにしても, 私の感想としては全体的に読上暗算の読みのスピードが速かったな, という印象でした。なにか事前に打ち合わせでもあったのでしょうか。

 高校生以上の部の優勝は, 2 問目の 5~16 桁加算を正解した奈良選手。第 18 回大会からこれで 19 回連続の北海道選手権者となりました。来年も優勝すると, 何と 20 連覇となります。他に今伸び盛りの選手は, 中学生の部で優勝した選手。奈良選手の次, 3 問目の 5~15 桁の加減算を正解しての部門優勝でした。もう少しですね。是非とも高校生以上になっても続けて欲しいと願っています。

 それに引き替え, 小学生以下の部の優勝は 4~7 桁。これはちょっと寂しい結果です。


 次は部門別読上算競技。

 1 問目はいつも通り 7~16 桁加減算, 読みのスピードは 28.5 秒でした。加減算でこのスピードは相当速かったと思いますが, さすがの聞き取りやすさであったとは言え正解者は出ませんでした。

 2 問目は加算 30.6 秒(主催者発表の記録は 30.88 秒)。ここで高校生以上の部の眞田選手が唯一の正解, 北海道選手権者となりました。

 中学生の部の優勝は, 5 問目の加算 28.3 秒。これまた相当読みの速い問題での正解でした。

 小学校の部の優勝は, 6問目の加減算 40.5 秒(正解者 5 名), そして 11 問目の加算 41.6 秒でようやく 1 人に絞られました。


 最後の部門別はフラッシュ暗算競技。

 1 問目は 3 桁 15 口 1.70 秒からのスタートでした。2 問目は 1.80 秒, そして 3 問目の 1.90 秒で若松尚弘選手ただ 1 人が正解し, 北海道選手権者となりました。ここ何年かは, この種目は若松選手か眞田選手かという感じがしますが, その眞田選手は次の 2.0 秒での正解でした。ちなみに高校生以上の部の入賞ラインは 2.8 秒でした。

 中学生の部の優勝は 2.8 秒, 小学生以下の部の優勝は 3.5 秒でした。入賞ラインは中学生の部が 3.8 秒, 小学生の部が 12 口 4.0 秒でした。いずれも例年通りの結果と言えると思います。


 さて最後に, 3 名出た同点決勝の様子です。若松選手, 中村選手, 工藤選手による優勝決定戦, 問題は全日本通信大会の同点決勝問題と同一問題, 最初にいずれかの選手が挙手をした瞬間に止めがかかり, 得点が高い選手が優勝というルールです。

 真っ先に挙手をしたのは, 大方の予想通り若松選手でした。そのタイムは 1 分 32 秒でした。

 得点を 300 点から 10 点刻みで読み上げ, 最初に挙手をした選手の優勝です。結果は, 280 点で挙手となった若松選手が見事北海道選手権者となりました。

 ……と淡々と書くと, なーんだ予想通りじゃないかと思いますよね? 実は, これが結構キワドイ結果だったのです。

 第 2 位は工藤選手でした。実は若松選手が 1 分 32 秒で挙手をしたときに, 工藤選手は最後の種目としていたみとり算最後の問題に取り組んでおり, あと 1~2 秒で終わるという段階だったのです。中村選手も, 見取算で大差を付けられましたがそれ以前のかけ算, わり算まではかなり良い勝負となっていました。

 もちろん, スピードだけではなく正確さも重要です。工藤選手は, 今回勝負を掛けたようで, かけ算もすべて暗算で計算していました。普段は 10 桁くらいからそろばんを使用しています(それでも暗算とほぼ同じスピードで計算することは以前レポートしました)。相手が超スピードの若松選手ということで, このように「どのように計算するか」という駆け引きが決勝開始前から始まっているのです。その工藤選手の得点は, 試答点 290 点, 正答点は 250 点でした。結果として若松選手とは 30 点の差が出来ましたが, その代わり若松選手よりも先に手を上げられる可能性に賭けたということになります。そろばんにすれば試答点はきっと 280 点だったでしょうが, 確かにこれでは結果的に自動的に若松君の勝利だったわけです(同点の場合挙手した方が勝ち)。

 ちなみに中村選手は試答点 250 点, 正答点が 190 点でした。一見得点が低いように感じますが, 工藤選手同様試答点をもう少し抑えれば逆に正答点が上がったのかも知れません。でも「若松選手に勝つ」ことが目的であり, それを達成できなけれれば 270 点でも 0 点でも同じというのがこの同点決勝。彼もスピードを高め, 少しでも得点できる可能性に賭けたといえるでしょう。試答点が少なければ, それ以上の得点は出ませんから。


 というわけで, 今回のレポートは以上です。

 来年も楽しい大会になることを祈って, 終わりたいと思います。

第 48 回 札幌市民珠算競技大会(2013/12/22,札幌市)

 2013 年 12 月 22 日(日), 標記大会が北海道経済センターにて行われました。

 いつも通り, 小学 4 年生以下と 5 年生以上で 2 会場に分けての実施。いつもと異なるのは, その会場が例年と逆だったということでしょうか。広い方の A ホールが 4 年生以下, B ホールが 5 年生以上でした。

 さて, 今回はどのような大会になったのでしょうか。私が参加した B ホールの様子をメインにお届けします。


 まずは概況から。

 参加者数が昨年度よりも増えたそうですが, 残念ながら高校生以上は変動が非常に大きかったです。高校生以上は何と 4 名だけの参加。札幌開成高校の浅野選手が受験のため欠席だったこともありますが, 昨年度は札幌東商業を筆頭に 10 名の参加者がありましたので, とても残念です。特に同高校の参加者がたったの 1 名で, 団体を組めない状態でした。これはこれまででは考えられなかったことです。一般の部は7名から 10 名と増えました。眞田選手が転勤で札幌に来たこと, そして若松選手の妻がこちらに来られたことが最大の要因でしょうか。これからも 10 名程度は確保できそうです。

 今年度から自ら珠算教室の経営を始めた若松選手(夫妻)が, 自らの教室名「札幌そろばんファクトリー」での参加となりました。一般の部はその夫婦 2 名だけでしたが, 参加名簿上は小学校名なので知らなければわからないことですが, 実はこの教室から優勝者まで出ました。素晴らしいことです。若松選手(夫妻)には, 今後は選手としてではなく, 先生としても頑張って欲しいところです。


 まずは総合競技。

 一般の部で, 若松夫妻と関口祐介選手の 3 名が満点でした。あと中学校 3 年生の部で満点が 1 名いましたので, それら 4 名によりそろばん札幌一決定戦が行われました。

 札幌一決定戦はそろばんコンクールの全国一決定のための決勝問題を使用。若松選手が 1 分 33 秒という圧倒的なタイムで挙手, 残念ながら満点ではなく 180 点ではありましたが, それでも 2 位の若松彩選手が 150 点でしたから大差での優勝となりました。

 次に各部最高点による全国一決定のための決勝問題。ここで各部の挙手時間を紹介しておきます(秒未満切り捨て)。一般の部 I の若松選手が 1 分 22 秒, 高校生の部が 5 分 37 秒, 中学 3 年生の部が 5 分 17 秒, 中学 2 年生の部が 5 分 40 秒, 中学 1 年生の部が 3 分 09 秒, 小学 6 年生の部が 5 分 33 秒, 小学5年生の部が 3 分 46 秒, 小学 4 年生の部が 7 分 11 秒, 小学 3 年生の部が 7 分 10 秒, 小学 2 年生の部が 7 分 11 秒, 小学 1 年生以下の部は挙手なし(制限時間 10 分で計算が終わらず)でした。

 トップだけではなく入賞ラインとしてみると, 一般の部はいつも通りの圧倒的なレベル。最下位でも 950 点でした。ちなみに昨年度の最下位は 975 点です……恐ろしい限りです。以下 10 名未満の部は紹介しないことにします。中学 1 年生の部が 555 点。昨年度よりは落ちましたが, ほぼ例年通りです。小学 6 年生の部が 705 点, 3 年連続で 700 点を越えました。小学 5 年生の部が 730 点, ここ 5 年の最高点, 入賞は難しかったと言えるでしょう。小学 4 年生の部は 790 点, 3 年ぶりの低水準です。小学 3 年生の部は 695 点, 何故かこの部は年によって大幅にラインが上下しています。小学 2 年生の部が 585 点, 例年通りです。小学 1 年生以下の部が 485 点, そもそも 10 名以上の参加がコンスタントになってきたこともあり, この部のレベルの上がり方が最も激しく, 今後が楽しみです。


 次に種目別の読上暗算競技です。

 優勝が一般の部の若松選手, 5 桁~ 11 桁での正解でした。お次が中学生の部で 10 桁の正解, 以下 9 桁以下でした。この競技の選手層がどんどん薄くなってきている感があります。

 次に読上算競技です。

 全国大会入賞レベルの浅野選手が不在だったとはいえ, 同レベルの眞田選手が入っているのでどうなるかと思っていましたが, 何と優勝は失礼ながら意外な選手でした。その選手は関口美紀選手(以下, 美紀選手)。2 問目での正解だったのですが, 加算 36.6 秒と読みのスピードが比較的遅かったこともありゴソッと起立したわけですが, 答えを読み終わっても立っていた選手がたったの 2 名, しかも一般の部は美紀選手 1 名だけと判明するや本人が「うそ~!」と絶叫。本人によると, 14 年ぶりの優勝だったそうです。おめでとうございます。やはり, 順当以外のことが起こると大会は盛り上がるものです。

 ちなみに, 美紀選手の他の正解は, 中学生の部で 1 名でした。こちらもおめでとうございます。今後, もっともっと精進してくださることを期待しています。

 それにしても, 桁を落とさず競技が終了したのはここ 5 年間で初めてのことです。まぁ 16 桁を超スローで読むのと, 桁を落としてスピードを維持するのと, どちらを採るのかという問題はありますが。

 アトラクションのフラッシュ暗算ビンゴはここ数年続いているものです。本当に, 毎年違うことを企画してくれることを期待したいところです。あと, せっかく眞田選手も来たことですから, ギネス記録を単に見せるだけではなく, こういった選手が正解できるレベルで実際に正解するところを見せるくらいのことはして欲しかったところです。まぁ今回の環境(若松選手, 眞田選手は会場の最も後ろの方で, 数字が非常に小さく見えましたし, フラッシュ音も同期ずれしていました)では良い記録も期待できなかったかも知れませんが。


 というわけで, 今回のレポートは終了です。そして, 2013 年のすべての大会が終わりました。

 2014 年は, 2013 年以上に多くの大会が楽しい大会になることを期待しています。運営される先生方も大変でしょうが, もっともっと頑張っていただければと思います。

第 71 回 全道珠算競技大会(2013/9/15函館市)

 2013 年 9 月 15 日, 函館市のサンリフレ函館にて表記大会が盛大に行われました。

 参加者数 340 人。まさに「盛大に」と言って良い大会だったように思います。

 内容も, 久々の復帰選手あり, 内容の濃い同点決勝あり, 途中でハプニングありと, レポートするにふさわしい(?) 大会となりました。

 では, その様子をレポートします。

競技レポート

 競技内容は例年通り。個人総合競技はそろばんコンクールの問題を使っていますが, 小学生以下がその前半半分を使用, 中学生以上は後半半分を使用しています。当然制限時間は半分。都合, 後半半分グループは, 本家そろばんコンクールよりも相当難易度が高い問題を使用していることになります。特にみとり暗算の後半半分 15 問を制限時間 1 分 30 秒は凶悪だと思います。

 まずは個人総合競技。

 開会式が 8:30 開始, 競技が 9 時開始です。

 かけ算 5 分, わり算 5 分, みとり暗算 1 分 30 秒, みとり算 5 分の 4 種目, 9:25 分には競技が終わりました。

 問題はそのあと。全種目交換採点なのですが, 小学校 4 年生以下の部が酷すぎる。もちろん小学生が悪いなんて言うつもりはありませんよ。運営側もそんなこと毎年の恒例行事ですからわかってるだろうに, 毎年何の対策もナシ。小学 5 年生以上が 30 分もあれば終わっている中, 小学 4 年生以下の部を永遠待ち続ける状況。更に司会から「完全に交換採点が終わるまで私語を禁止します!」の一言。現実に則っていない。これは完全に運営の怠慢だと思いますがどうでしょうか。

 個人的には, どうせ交換採点ですから, 席順をいじれば良いと思うんですよね。例えば, 小学 4 年生以下の部の選手を A, 高校生以上の選手を B とし, 会場片側から A 列, B 列, B 列, A 列, B 列, B 列……のように座らせる。まずは B 列同士交換採点。多分 10 分程度で終わります。その後, B 列の片側が A 列の答案を採点, B 列のもう片側が再採点。つまり, 小学 4 年生以下の選手は採点しないシステムなんてどうでしょうか。もちろん小学 4 年生以下の部の選手が採点する教育的効果といいますか, そういったことを口にする先生方もいらっしゃるのでしょう。しかし本来, 採点はすべて運営側で行うべきものでしょうから, 理由にならないと思います。とにかく大会をスムーズに進めること, このことをもうちょっと考慮していただきたいものです。

 さて, 満点が 4 名も出ました。これも何年ぶりのことかわからないくらい久しぶりのことです。少なくとも, 私が大会復帰してからは初めてのことです。このレポートは次回に譲ります。

 10:30 頃から種目別読上暗算競技が, そして午後最初の種目として 13 時から読上算が始まりました。

 読上暗算競技は読みのスピードが遅いのであまり気になりませんでしたが, 音響が酷すぎた! この体育館としても使えるとても天井が高い会場で, せっかくレンタルしているアンプ(スピーカー)がステージ横にしか設置されていない。後ろ半分の選手からすると反響音が大きすぎてスピードの速い読みは全然聞こえないレベルでした。いえ, 「聞こえてはいる」のですが, 「聞き取れない」ということです。

 大会によってはその辺りよく(?)考えられていて, アンプを会場横(当然前端と後端の中間位置)にも配置されていたりします。しかし現代のコンピュータ廉価時代。センター試験よろしく, 全員にイヤホンを配布して無線で音声を送り届けるとかしても良いのではないでしょうか。それこそ事前に100問近くPCに録音しておいて, 問題番号を押せばそれを再生するだけ, とかにしておけば, 読み間違いによる読み直しなどもなくなります。どうでしょう。

 話を戻して読上暗算競技。1 問目はいつも通り 5~16 桁の加減算。ここでは正解者は出ませんでしたが, 2 問目の加算で 1 人正解。はい, いつもどおりです。おめでとうございます。しかしこの読上暗算, そろそろ同レベルの選手が出始めていますね。16 桁で函館の選手がもう 1 人惜しくも「1 違い」で散っていました。高校生の部優勝の浅野選手も 14 桁で優勝。彼としては自己ベストレベルですが, 年齢的に考えて 16 桁も狙えそうです。中学生の部の優勝は 12 桁, 優勝者の実力としては「上がっていませんでした」。最も伸び盛りになるハズの年齢ですが, これはちょっぴり残念です。そして小学生以下の最高は 7 桁……次なる選手が全然存在しません。大丈夫でしょうか。

 とにかく, 今の珠算界は社会人によって成り立っていると言っても過言ではない状況なんですよね。35 ~ 40 歳位の年齢層に全国優勝レベルがゴロゴロ。復帰組もこの辺の年齢です。あとは社会人になっても続けている組がちょこちょこいる状況。大会の問題も, この辺りのレベルでも間違える可能性がある程度の問題を考えている節があり, 中学生にとってはまさに苦行。本当はこの苦行にも耐える練習をして欲しいところですが, そういう気概のある選手がなかなか出てこない。というか, 楽しくそういうレベルに到達できるような練習環境がないと言っても過言ではないのではないでしょうか。

 このまま 10 年経ったとして, 珠算界は一体どうなってしまっているんでしょうか。私が心配しても仕方がありませんが, しかもネガティブ思考で申し訳ないのですが, ちょっと残念な姿……つまり「良いオッサンとオネェサン集団が楽しむ競技」となっている姿が想像できてしまいます。

 そして問題の読上算競技。1 問目はいつも通り 7~16 桁の補数計算でしたが, これが 27.1 秒(今回は読みを録音して計測したので正確です)という驚異的スピードの読みでした。数名答えを書いていましたが, その選手はほとんど会場の前半分側のみ。後ろ半分に座っていた読上算の名手である眞田美歩選手やここ数年連続全国大会で入賞している浅野選手ですら, 聞き取れないという状況でした。

 3 問目, 加減算 31.7 秒でただ 1 名正解したのが, 前回の道央大会から復帰した全国制覇経験者の工藤由季夫選手でした。会場からは何故かどよめきが……いやいや, 工藤選手に失礼でしょうが! 工藤選手の本当の実力を知らない方々が如何に多いかということを知った瞬間でもありました。

 次の 4 問目, 加算 30.5 秒で中学生の部の優勝が決定。十勝の選手でした。6 問目, 加算 33.8 秒で高校生の部の優勝が決定。しかも浅野選手ではありませんでした。もちろん今回の優勝者も実力者ですよ! そういう意味ではなく, 浅野選手が 33 秒という「遅い」スピードの読上算で合わないなんてことは珍しいのです。ちょどこの 6 問目辺りから, ようやく後ろの座席の入賞が出てきました。一般の部も一気に 4 名の正解が出ました。

 8 問目, 加算 38.0 秒で一般の部はここで入賞枠が埋まり, 小学 5・6 年生の部からは 3 名の正解が出ました。次の加減算でそのうちの 1 名だけが正解して優勝が決定。この時点で, 小学 4 年生以下の部の正解はありません。

 そして事件が……。この日は朝から雨で, しかも嵐に近いような状況で, JR も乱れていました。

 9 問目が終わったところ, 時刻にして 13:40 頃, 釧路の選手が「JR が次の便を最後に動く保証ができない」とのことで緊急離脱。この大会に向けて頑張って練習してきた方々にとっては残念なことですが, 天候にはかないません。釧路の JR 利用組が会場を後にするまで大会は中断しました。小学 4 年生以下の部の優勝が釧路組にいたとすると, ちょっと残念です。もちろん, この後行われた都市対抗競技にも釧路チームの姿はありまんせんでした。

 小学 4 年生以下の部の優勝は, 12 問目の 7~14 桁加減算でした。

競技復帰者, そして同点決勝

 さて, ここからは明るい話題メインでいきたいと思います。

 残された種目・部門は, 個人総合の同点決勝, つまりそろばん北海道一決定戦の模様でしょうか。

 というわけで, 早速復帰組の話題です。

 前回の道央大会では伝説の(!?) 工藤由起夫選手が復帰しました。工藤選手は 16 年ぶりと言っていたような気がします。そして今回復帰したのは, 谷口真一選手です。全国で名を轟かせる, というわけではありませんが, 彼の特徴はとにかく「正確である」の一言に尽きると思います。最後に出場した大会が平成 18 年 1 月に苫小牧にて行われた北海道珠算選手権大会ですから, 7 年半ぶりの復活ということになります。その 7 年半前の最後の大会では, 見事満点(問題は全珠連通信大会のものです)を取得して同点決勝に出場しています。このときの優勝者は若松選手です。同点決勝は完全なるスピード勝負ですから, さすがにかなわなかったのでしょう。それでも, 満点を取ったという事実だけでも, その計算の正確さはおわかりいただけるかと思います。

 さて今回。そろばん北海道一を決定する同点決勝に進出した選手は 4 名。4 名もの選手での同点決勝自体がもう何年ぶりのことかわからないレベルですから, それはそれは盛り上がりました。この大会の同点決勝は1種目ずつ採点しながら行われますから, なおのことさら盛り上がります。

 この同点決勝の問題のレベルは「そろばんやろうよ!!」にも記載していません。ここに紹介しますが, その問題のレベルには驚愕します。もともとこの全道大会の問題レベルが, そろばんコンクールの問題後半半分を制限時間半分にて, ということでした。そして同点決勝は, そろばんコンクールの問題ラスト 1/6(実際に解く問題から比較すると 1/5)を制限時間 1/10 で(みとり暗算は制限時間 1/9)です。問題は徐々に桁数を上げていきますから, 単純に計算量が 1/5 になるというわけではなく, もっともっと多いことになります。具体的には, 例えばかけ算は「6 桁× 5 桁」の問題 10 問を制限時間 1 分, ということになります。みとり暗算に至っては, 5 桁 10 口が 2 問, 6 桁 10 口が 3 問を制限時間 20 秒という恐ろしさ。もう既に「何故終わるの?」と聞きたくなるレベルです。もちろん, 同点決勝出場者全員が終わるというわけではありません。つまり, 究極のスピード勝負と言っても過言ではありません。

 出場した 4 名を参加番号順に紹介しましょう。まずは若松尚弘選手。言わずと知れた 2011 年度のそろばん日本一です。この同点決勝の問題ですら, わり算では全問見直しができるという驚愕のスピードの持ち主です。2 人目は若松彩選手。若松尚弘選手の妻となった彼女は, そろばん道東一を取るなど, その実力はだれもが認めるところです。昨年行われたそろばん名人戦では, 予選を突破してベスト 16 に入っていました。3 人目は工藤由起夫選手。21 年前のそろばん日本一です。そろばんを使いながら若松尚弘選手にひけを取らないスピードを誇り, かつ(私感ですが)若松選手以上の正確さを誇ります。ちなみに今回の大会の練習は前日に 5 回だけやりましたということでしたが, その 5 回とも満点だったそうです。そして当日も満点ですから, 満点以外はなかったということになります。最後の 4 人目が, 先に紹介した谷口真一選手。そもそも 7 年半振りの復帰ながら総合競技でしっかり満点を取るあたり, その正確さをうかがい知ることができますよね。

 1 種目ずつ紹介しましょう。まずはかけ算。5 桁× 6 桁を 10 問, 制限時間 1 分です。若松夫妻は共に暗算。工藤選手はそろばんと暗算のハイブリッド。そして谷口選手は完全にそろばん使用です。ちなみにこの問題レベルは, 整数問題か非整数問題があるかということは置いておいて, 日珠連の段位と同レベルですから, 10 分で 58 問以上正解すれば十段ということです。10 分で 60 問を日珠連十段レベルとすると, この同点決勝レベルはその約 1.7 倍のスピードが必要です。そもそも日珠連十段は全珠連十段の 1.5 倍程度のスピードが必要ですから, 全珠連十段レベルの約 2.5 倍のスピードが必要ということになります。もう少々判りやすく書くと, この同点決勝で 30 点取れば日珠連十段レベルです。結果は, 若松尚弘選手 50 点(満点), 若松彩選手 35 点, 工藤選手 40 点, 谷口選手 30 点。全員日珠連十段レベルは証明されました。特に谷口選手はすべてそろばんでこのスピードですから, さすがというよりありません。

 2 種目目はわり算。11 桁÷ 5 桁を 10 問, 制限時間 1 分です。若松尚弘選手 50 点(満点), 若松彩選手 40 点, 工藤選手 50 点(満点), 谷口選手 25 点でした。一般的にかけ算よりもわり算の方がやさしいとされますが, この大会はかけ算とわり算が同一桁数(検定試験はわり算が 1 桁落ちるのが通例)ですから, さすがにわり算をそろばん使用はキツいといことでしょう。日珠連段位のわり算問題も「10桁÷」と 1 桁落ちています。ですからこの種目の 25 点も, 日珠連十段を取得するのに十分なスピードであると言えると思います。

 3 種目目はみとり暗算。5 桁 10 口を 2 問, 6 桁 10 口を 3 問, 合計 5 問を制限時間 20 秒です。加減算 2 問のうち 1 問は補数問題(答えがマイナスとなる問題)となっています。筆者は全珠連十段ですが, 2 問しかできません。恐ろしい設定です。結果は, 若松尚弘選手 50 点(満点), 若松彩選手 30 点, 工藤選手 40 点, 谷口選手 40 点でした。谷口選手, ここで初めて「最下位」ではない得点となりました。やはりこの設定で満点は「宇宙人レベル」でないと難しいということでしょうか(褒め言葉ですよ!)。

 この時点で, 若松尚弘選手 150 点(満点), 若松彩選手 105 点, 工藤選手 130 点, 谷口選手 95 点。1 位と 2 位の差は 20 点ですから, 若松選手が最後のみとり算で 2 問間違えるということが起きないと逆転はありません。みとり算は計算量だけみるとみとり暗算よりも少ないですが, より正確さが要求される種目ですから, 意外と逆転もありえます。

 最後のみとり算。11 桁 10 口を 2 問, 12 桁 10 口を 3 問, 合計 5 問を制限時間 1 分です。みとり暗算よりも 1.5 倍ほど時間を掛けて計算しても終わる計算ですから, 4 人とも満点の可能性はありますし, 先述したようにどの選手も間違える可能性もある問題です。結果は……若松尚弘選手 50 点(満点), 若松彩選手 50 点(満点), 工藤選手 50 点(満点), 谷口選手 40 点となりました。

 4 種目の合計は, 若松尚弘選手 200 点, 圧巻の全種目満点でした。次が工藤選手の 180 点。そして若松彩選手 155 点, 谷口選手 135 点。こうして, 熱い熱い同点決勝は幕を閉じました。

 この競技の得点の途中経過は常にスクリーン(とはいえ会場左側の選手からは小さすぎて全然見えませんでしたが)に表示されており, 観戦している方々にも判りやすい状況になっています。やはり同点決勝はこのように多数の選手で行われると盛り上がりますね!

都市対抗競技

 かなりレポートが長くなってきましたが, 最後に都市対抗競技です。これも 1 種目ずつ行われ, その途中経過もスクリーンの表示されていますので, 参加者は各都市 5 名だけながらなかなか盛り上がる競技となっています。もちろん大本命は, 全国レベルの選手だらけの札幌でしょう。しかし, 1種目1問のみ, 読み上げ種目もあるというこのシステム上, どのような実力者も緊張からか間違える可能性があり, なかなかスリリングです。  そして今回, 大事件が起きました。その種目は, まさかのわり算。大本命の札幌が, 5 名中正解者が 3 名! 間違えた 2 名のうちの 1 名は, 北海道選手権者の経験もある選手! さすがに札幌の部からは「えーーーっ!」というどよめきが起こっていました。

 最後に優勝したのは, 5 点満点(5 人正解)×6 種目で 30 点満点のところ 29 点を獲得した室蘭市でした。2 位が函館市(28 点), 3 位が札幌市(27 点)でした。ちなみに札幌市は, もう一つ読上算で 1 名間違えてしまいました。なお室蘭市の優勝は昭和 57 年大会以来実に 31 年振りのことでした。おめでとうございます!

 ……って, この 31 年前の都市対抗競技室蘭市チーム 5 名の中に, 筆者が含まれています。実に懐かしい限りです。


 以上, 今後とも熱い大会が増えてくることを祈りつつ, 今回のレポートを終了します。

第 53 回 加盟校珠算競技大会(2013/2/17,札幌市)

 今年もやって参りました, 札幌珠算連盟, 年度再度の競技大会, 加盟校大会。年度末のお祭り的な位置づけの大会ですが, 果たして今年の様子はどうだったのでしょうか。

 まずいきなりですが, 会場がいつもと異なりました。

 とはいえ経済センターは経済センターなのですが, A ホールと B ホールが入れ換えられていたのです。おそらく人数の関係でしょう, 小学校 4 年生以下の出場者が増えたのでしょうね。

 そして札幌市民大会のレポートと同様, 若松選手が昨年秋からこの地区に戻ってきたことによって彼がこの大会に出場したことも大ニュースです。

 大会そのものの記録は, 例年とさほど変わりませんので割愛します。


 さて, 例年通り大会記録の入力時間を利用した後ランクションが午後に行われたわけですが, これが「フラッシュビンゴ」ではなく久々に競技変更となりました。というかイベント物なのですから毎年変えてよ, と言いたくなるところですがそれ以上突っ込むことはやめることにしましょう。

 このアトラクションを終えても, まだ閉会式をできる状況ではありません。いえ, きっとこの会場の記録は終わっていたのでしょうが, A ホールと B ホールの進行に大幅な差が出ていたのです。

 そこで, B ホール(小学 5 年生以上)では, 今年何年ぶりかでこの地区に戻ってきた 2011 年のそろばん日本一, 若松選手から選手のみなさん……もちろん視点は小中学生相手でしたよ……へメッセージをいただく, という「追加イベント」が催されたのです。会場前のステージ上に上がり, マイクスピーチ(?) が行われました。この 4 月から珠算塾を開くこと, 中学生や高校生になる瞬間にやめる選手が多いがもったいないので是非続けて欲しいことなど, 5 分以上に渡るなかなか熱いメッセージで, みんなシーンとなって聞いていました。こういうイベント, 時間調整が難しかったという「事故」による開催ではあったもののなかなか良いですよね。時間を有効活用できた, という感じです。

 それでもなおかつ時間が余り, 時間が許す限り「若松選手が指名した選手がスピーチ」, そして「その選手が指名した選手がスピーチ」……と続けて 2 名スピーチが続行され, ようやく閉会式を迎えたのでした。


 そんなこんなで, 2012 年度最後の大会が終わりました。

 2013 年度も皆さん, またよろしくお願いいたします。

 若松選手ではないですが, 4 月からも引き続き, そろばんを楽しく続けましょうね。

第 47 回 札幌市民珠算競技大会(2012/12/9,札幌市)

 12 月 9 日(日), 北海道経済センターにて行われた表記大会についてレポートします。

 本大会は, 日本珠算連盟主催のそろばんコンクールを兼ねており, 問題もそろばんコンクールのものを使用しています。


 まずは個人総合競技。今年の目玉は, 何と言っても昨年の全日本珠算選手権大会の覇者, 若松選手が, 生まれ育ったここ札幌に戻ってきたことでしょう。その圧倒的なスピードで, 果たして順当に優勝できるのか。そして誰もが知るその実力に果敢に立ち向かう選手は現れるのか, といったところです。

 まず, 満点は一般の部で若松選手を含む 3 名, 高校生の部で 1 名, 飛んで小学校 6 年生の部で 1 名の合計 5 名でした。

 同点決勝は, そろばん札幌一を決めるものをこの 5 名で先に行い, その後各部の最高点の者で全国一決定のための決勝を行いました。個人的にちょっと謎だったのが, 前後逆じゃないの? ということ。札幌一が先に決まって, その後の全国一のための決勝で部門優勝を決めたため, 札幌一が部門優勝にならない可能性もあったわけです。それはさすがにどうかと感じました。

 それはそうと, かけ算と割り算が 10 問, 見取暗算と見取算が 5 問, 合計 200 点満点で制限時間 10 分の同点決勝問題。もちろん決勝の場に来た方々は 10 分なんて掛かるわけがないのですが, 個人総合でギリギリ満点取れる可能性がある選手でも 5 分程度かかる問題です。

 札幌一を決める決勝では, 順当に(?) 若松選手が最初に挙手。この時点で計算ヤメです。そのタイムは, 驚愕の 1 分 38 秒 81。

 ところが事件が起きました。若松選手, なんと見取暗算と見取算で合計 4 問も間違えるという絶不調振りを発揮され, 試答点が 180 点程度だった高校生の選手が 170 点で優勝をかっさらっていったのです! これは快挙です。この高校生, 若松選手, そして私自身と同じ一條珠算塾に在籍しているのですが, 多分スピードでも若松選手に次ぐ選手に成長していると思われます。間違いなくポスト若松でしょうから, 今後も楽しみです。それこそ, 全国一を目指して欲しいところです。

 そして部門毎の全国一を決定するための決勝が行われましたが, 若松選手はここではリラックスして臨んだでしょうが, 先程よりも更に速い 1 分 28 秒 78 での挙手でした。そして 200 点満点だった模様です。こういうことがあるから一発勝負の大会は面白いんですよね。それにしても若松選手のポテンシャル, 恐ろしい限りです。こんな選手が今後ずっと札幌にいるかと思うと, これを目指すチビッコたちも出てくるでしょうから, この地域のレベルアップにも繋がるものと思われます。


 ここで, 参加人数について一言。

 私の感覚からすると, 参加者が異様に少ない大会だったように思います。Bホール(小学校 4 年生以下)はいざ知らず, 一般の部はたったの 7 名, 中学校 3 年生の部は何と 1 名! 過去 4 年間を見ても, こんなに少なかったことはありません。色々な事情はあるでしょうが, ちょっと寂しいですね。

 一般の部は, その 7 名が全員満点を取れる実力があると思われる選手ばかりだったのですが, 7 名中満点が 3 名, 最低点が 975 点という恐ろしいレベルでした。後で紹介する種目別競技でも, 誰が最後に残るのか? のような謎な光景が見られました。

 高校生の部はジャスト 10 名の参加。ポスト若松と思われる選手がダントツ, そして 900 点台が 5 名でした。下位 4 名が札幌東商業高校の選手だったことが, 何となく高校教育に於ける珠算の位置づけの低さを物語っているように思いますがどうでしょうか。結局は「珠算教室(塾)次第」というところでしょうか。

 中学校の部は, どの学年も満点が出ませんでした。中学校 2 年生の部は, 参加者こそ 6 名とここ 4 年間で最小だったものの, 最低点は 770 点と過去 4 年間で最高でした。

 小学校 6 年生, 5 年生の部は, いずれも優良賞ラインが過去 4 年間で最高で, 層が厚くなってきた感があります。

 特筆すべき部分は小学校 1 年生以下の部。2 年前までは 10 名も集まらないような状況でしたが, 昨年いきなり 10 名超え。そして今年も 17 名の参加。どうやらそろばんを学び始める年齢が低くなってきているようです。長く続くと良いですね。


 種目別は, A ホール(小学校 5 年生以上)の部しかわかりません。あしからず。

 まずは読上暗算。一般の部の優勝は当然のように若松選手。12 桁。

 しかし, それを超える選手が 2 名いたことは特筆すべきでしょう。まずは例の高校生, 13 桁。これは昨年と同じ桁数です。そして小学校 6 年生の優勝が若松選手と同じ 12 桁でした。この選手は昨年は 11 桁でしたから, 実力はまだまだ上がりそうで, 今後が楽しみです。

 高校生の部は, 3~4 桁まで落ちても 5 名しか正答が出ず, 2~3 桁まで落として競技が続けられましたがキリがないということで打ち切りとなりました。残念。

 そして読上算。

 実は例の高校生, この種目をかなり得意にしており, 全国大会でも入賞しています。そして今回もその実力をいかんなく発揮し, 第 1 問 7~16 桁の補数計算, 32.5 秒という速度を一発で正解し, 見事優勝でした。ちなみにこのとき, 答案の字が汚いということで競技委員長まで答案を審議されたことで, ちょっぴり会場が笑いに包まれました。彼はどうやら, キレイに字を書く練習が必要なようです。そういや若松選手も, 小学校時代に字の練習をさせられていたことを思い出しました。

 なおここでも, 高校生の部は 5~10 桁でも正答が出ず, 5 名のみ入賞で競技が打ち切られました。ちなみにその 5 名は 16 桁を正答。上位 5 名とそれ以外とのギャップが相当あったようです。それにしても, 昔から商業高校は暗算は弱いけどソロバン種目はある程度できる, というイメージがあったので, 私はこの読上算の燦々たる状況には驚きと悲しみを覚えました。

 最後にアトラクション, 恒例のフラッシュ暗算ビンゴです。これもそろそろ別のこと考えれば良いのに, と思ってしまいます。

 良かったのは, 昨年のフラッシュ暗算日本二位の若松選手が来たことですよね。ビンゴが終わったあとで, 司会者から「若松選手がいるので, その実力を見てもらいましょう」とアナウンスがあり, 本人の申告で 3 桁 15 口 2.1 秒を実演。本人は「これなら確実に合わせられる」というスピードを指定したのですから当然ですが, マイクを向けられ答えを述べ, スクリーンで答え合わせをするとご名答。会場がドッと湧きました。こうした演出はなかなか良いですね。


 というわけで, いろいろあった今年の大会。若松選手札幌復帰第 1 戦だったのでこのような盛り上がりもあったわけですが, 来年以降果たしてどうなるのやら。もっと出場選手が増えることを祈りつつ, 今年の最後の大会レポートを締めたいと思います。

 皆さん, 今年 1 年間, お疲れ様でした。

第 70 回 全道珠算競技大会(2012/9/23,釧路市)

 2012 年 9 月 23 日(日), 釧路市国際交流センターにて表記大会が行われました。

 この大会は, 北海道商工会議所連合会が主催する第 70 回という歴史のある大会です。今回はそんな「節目」の大会の様子をお伝えします。


 まず個人総合競技, 及び団体総合競技。どうやら今年は一般の部の参加者が例年よりも多かったようで, 多分久々ですよね, 「2 列」を占有していましたし, 団体総合競技に「優良賞」が設けられました。大変喜ばしいことです。

 各部門の入賞枠も, どの部門も例年とほぼ変わりませんでした。

 そろばん北海道一は, 共に満点だった一般の部 1 名と高校の部 1 名による同点決勝。北海道一を勝ち取ったのは, この超難度の同点決勝で 185 点という高得点を叩き出した高校生でした。おめでとうございます。

 種目別, 読上暗算。この種目も, どの部門も例年とほぼ変わりませんでしたが, その中にあって小学校 5・6 年生の部の優勝桁数が何と 12 桁!(例年 8 桁程度です) 今度が楽しみな選手です。是非とも長く続けて活躍して欲しいものです。

 種目別, 読上算は, 異様にレベルが高かったように思います。まず 1 問目の補数計算, 31.8 秒という超高速ながら正解者が 3 名もいました。読み手が素晴らしかったとか音響が素晴らしかった(この影響はバカになりません!)とかそういったこともあるでしょうが, ここは純粋に北海道のレベルが高くなってきていると思いたいとことです。事実, 高校生の正解者は先日行われた全日本珠算選手権大会でも 5 位に入賞していました。

 中学生の部も, 加減算 33.6 秒で正解。小学 4 年生以下の部も, 加算 40.6 秒で正解(一般の部はここで終了)。確実にレベルアップしているように感じました。

 ただし, 一般の部以外はどの部門も入賞枠はほとんど変わっていません。つまり全体の選手層の底上げがされているということではないようです。

 都市対抗競技は, 選手層の厚い札幌市が満点優勝。何にせよ満点は素晴らしいことです。おめでとうございます。

 最後に, アトラクションでフラッシュ暗算が行われました。まず「3 桁 15 口 2.1 秒」を例として見せて, これを若松選手がフリップに答えを記入して答えるという演出でスタート。1 問目でいきなり「6 桁 3 口 3 秒」という謎の設定を見せるなど, 進行はかなり頑張っていました。

 とはいえ 4 問目辺りからいつもの「3 桁」ばかりとなり, やや冗長になってしまった感がありました。残念!

 ちなみに今回用いたフラッシュ暗算ソフトは, わたくし ma-. 作のものでした。上手に使っていただいてありがとうございました。しかし, 2.0 秒未満は 1/100 秒設定を可能にしていたり, だからこそ第 1 問を「3 桁 15 口 1.70 秒」というギネス記録に設定していたりしたのですが, 進行には全然気付いてもらえなかったみたいです。残念! またどこかの大会で使う機会がありましたら, どうぞ気付いてください(笑)

 というわけで, 楽しく熱い釧路での 1 日は, こうして終えることとなりました。来年の開催地は函館です。みなさん, また集まりましょう。


 ところで。

 大会前日, JR 釧路駅に着くといきなり「ようこそ釧路へ」というポスター。最近の珠算の大会ではあまりお目に掛からなかった歓迎ポスターに, 何か嬉しい気持ちが湧きました。

 JR 釧路駅の入口のガラス扉に張られたポスター。ホテルに向かう途中でも, JTB さんとか幾つかの店舗にも貼られていました。たかがポスターですが, 自分が出る大会のポスターをこうやってみると「よし, やってやるか!」という気持ちになるものです。また, 少なからず地元の方々にもこういった大会があるということを知っていただけるのではないでしょうか。事実, 今回の大会の観戦者の中には, まぁこのポスターで知ったのか他の報道で知ったのか, いずれにせよ「あるって知って見に来た」という, 保護者や引率以外の方もいらっしゃいました。今後もこういった光景が頻繁に見られると良いですね。

第 60 回 全国計算競技大会(2011/11/27,大阪府大阪市)

 2011 年 11 月 27 日, 大阪市立天王寺商業高等学校にて, 同校 100 周年記念第 60 回全国計算競技大会が開催されました。

 この高校は統廃合の対象となっており今年度で廃校が決定。このため, 事前からアナウンスがあったとおりこの大会は今回の記念大会が最後の大会ということで, きっとそのためでしょう, 参加人数が非常に多かったことも今回の特徴でした。会場の大講堂では 1 階には観客席を作ることができず, 観客は全員 2 階席からの観戦を余儀なくされました。

 ちなみにその実参加者数は, 珠算部門が高校生 57 名, その他 145 名, 計算機部門が 14 名, 合計 216 名でした。商業高校主催の大会ということで, 高校生が優遇されるシステムとなっていることと, 計算機部門が存在することが特徴です。

 それでは, ちょっと賞味期限切れな感も否めませんが, そんな大会のレポートをお届けしようと思います。

この大会の良さ

 ところで私自身, この大会は以前から気になっており, 毎年出たい出たいと思っていました。もちろん実力不相応であることは十分承知の上です。しかし, 毎年北海道からは大量に参加者がおり, その方々かから口々に「この大会は良い!」という評判を聞いていました。

 この大会の良さはいくつかあると思います。もちろん参加してみてわかったことも含めて列記してみますと

  1. 進行の金本先生の軽妙なトーク, 合わせて選手の視点に立った運営をしていると感じること

  2. 大会のテンポが良いこと

  3. 競技の種類が多く, 個人競技では入賞の見込みがない私のような選手でも希望が持てる競技も存在すること

  4. 逆に超高レベルバトルもあり, 全国一流の選手にとってもやりがいを持てること

  5. もちろん 1.~4. のおかげですが, 全国一流の選手が大勢集まる, つまりそういったレベルの競技を参加者も観戦者も体感できること

となるかと思います。

 とにかく, 9 時から 17 時まで, 開・閉会式と昼食時間を除く 6 時間の間に, 「個人総合競技(7 種目)」, 「応用計算予選」, 「団体特別競技」, 「読上暗算競技」, 「読み上げ算競技」, 「応用計算決勝」, 「種目別競技(7 種目)」, 「個人特別競技」と, 普通の大会ではあり得ないほど大量の競技が行われます。これらを 6 時間の「番組」として見ても全然飽きが来ませんし, 楽しむことができます。

 その間, 選手の移動やら机の移動やらもあり, 選手もそれらに協力します。そういった意味では, 選手も「しっかり大会をスムーズに進行させるべく協力しながら参加する」ことが前提となっていることがわかります。もちろん, どこかに明記されているというわけではありませんが, 自然とそんな雰囲気が作られていて, かつ(協力的という意味で)そういったレベルの選手ばかり集まっているということでもあるかと思います。

 大会の運営には同校の生徒も活躍しています。そういった生徒の指導も含め, この大会の運営者たちの努力は, その経過を見なくてもこの大会そのものを見るだけで十分察することができます。大会運営に向けた姿勢は, 本当に素晴らしいの一言です。

個人総合競技

 まず, 個人総合競技についてです。

 個人競技と書きましたが, 3 人の合計得点によって団体の順位も決定しますから, 団体競技の内容も兼ねていることになります。その辺りは, 他の大会と同様です。 また, 計算機部門があることにも触れましたが, こちらも同じ問題を使用しています。

 最初にお断りします。これらの記事では, 氏名を公表して良いと表明されている選手のみ選手名を示しております。もしも「私も名前書いて良いですよ」という方は, 掲示板でもメールでもその旨表明していただけると順次対応いたします。

 昔から珠算競技に参加されている方ならおわかりかとおもいますが, 簡単に言いますと個人総合競技の内容は旧「国民大会」の問題そのものです。1 種目 150 点満点, 合計 1,050 点満点となっています。

 なお, 今大会では, それぞれの種目で 140 点以上の者が「種目別競技」への出場することができるシステムとなっています。

(1) 乗算

 実・法合わせて 11 桁の問題を 30 問, 5 分。前半の 15 問は実数計算, 小数第 4 位未満四捨五入。後半 15 問は実が「円」のため, 整数位未満四捨五入。

 例えば

 20,468×654,321

 1,357,901×3.142

 日珠連検定段位のレベルなので, 全珠連十段を取得した程度では終わらない計算量なのですが, 実際にはこの大会の参加者のレベルが非常に高いため, 更に難易度を高くするために端数処理がかなり微妙な問題が数多く取り入れられています。例えば

 1.539×53.02141

のような問題です。それでも今回は, 満点 21 名, 140 点以上が 42 名いました。

(2) 除算

 法・商合わせて 11 桁の問題を 30 問, 5 分。前半の 15 問は実数計算, 小数第 4 位未満四捨五入。後半 15 問は実が「円」のため, 整数位未満四捨五入。更に, 前半, 後半ともに 1 問ずつ剰余問題が含めれています。

 例えば

 12,000,992,976÷12,789

 56.056÷0.0654

 12,345,678,901÷98,765 【余り】 (剰余問題)

 実のところ, 暗算種目はともかく, 珠算種目で乗算と除算の桁数が同じというのは珍しいことです。なぜなら, 大抵は検定問題を基準に作問するからで, 検定は全珠連も日珠連(日商)も除算は乗算よりも 1 桁少ないのです。桁数がズレている他の理由としては, 初級から順序よくそろばんの習っていくと, 除算よりも乗算の方が先に学ぶから, というのもあるかも知れません。全日本珠算選手権大会も, 全珠連段位の問題を用いているため, 除算が1桁減となっています。同じ全珠連でも, 通信大会は暗算メインで考えられたのか, 同じ桁数です。

 以上の理由からか, 乗算と除算が同じ桁数の場合, 除算の方が難しく感じる方も多いようです。かく言う私も, 通信大会レベルだとさすがに除算の方が楽に終わりますが, この大会の問題は乗算の方が題数が入ります。

 しかしこの大会はそんなことはお構いなし。昔からある国民大会レベルとはいえ, それでも簡単に感じる選手が多いため, 乗算同様端数処理で「選手の自信をなくさせます」。今回の大会は特に新しいタイプのものが出現したようで, 口々に「○○問目, こうなったんだけど, なった?」などという会話が休憩時間にあちらこちらから聞かれました。例えば

 32,323,250,074÷53,097

 123.45790788÷198.7249 (新タイプ)

のような問題です。それでも今回は, 満点 15 名, 140 点以上が 47 名いました。

(3) 見取算

 5 桁~11 桁 15 口 120 文字の問題を 15 問, 5 分。その中に, 補数計算 2 問。

 数字量だけで言うと, 最低でも 360 文字/分 のスピードが必要ということです。日珠連段位が, 10 桁 10 口 100 文字の問題 30 問を 10 分, つまり 300 文字/分 なので, ちょうど文字数が 2 割増です。それでも, もともと日珠連段位は見取算の難易度が低いと言われているため, これでもこの大会に出る選手にとってはかなり易しめです。ちなみに, 全珠連段位は, 243 文字/分 です。

 乗算や除算と異なり, 同じ条件で問題の難易度を上げることが難しいため, 非暗算種目の中ではこの程度(日珠連十段レベルより上)の問題でも難易度が低く感じられます。

 実際に今回, 満点 45 名, 140 点以上が 69 名いました。全参加者の 5 分の 1 程度が満点だった, ということになります。

(4) 伝票算

 5 桁~ 9 桁 15 枚 100 文字の問題を 15 問, 5 分 30 秒。

 そろばんで弾く場合, 最低でも 273 文字/分のスピードが必要ですが, 暗算で 3 桁毎に分けて計算する場合, 平均 2.03 枚/秒 のスピードで終わることになるため, ちゃんとめくりの練習をしている方にとってはかなり難易度が低い問題と言えます。

 現在, 日珠連検定では伝票算は完全に廃止されているため, 検定問題と比較することはできません。全珠連段位は, 222 文字/分。3 桁毎に分けためくりスピードは, 平均 1.62 枚/秒(7 桁問題は 2 回で計算), 或いは 1.86 枚/秒(7 桁問題から 3 回で計算)です。これまでの種目は大体全珠連のスピードの 1.5 倍の計算量だったことを考えると, 特に伝票算の難易度の低さが目立ちます。

 実際に今回, 満点 49 名, 140 点以上が 71 名いました。単純に数字量が見取算よりも 25%ほど少ないことから, 見取算では計算機部門で 140 点以上が 1 人もいなかった(さすがに秒速 6 文字超はキツい!)のに対し, 伝票算では 4 名出ています。

 ……もちろん, これをそろばんを用いて計算する私にとっては, 最悪の種目となります(汗)

(5) 見取暗算

 3 桁~ 6 桁 15 口 60 文字の問題を 15 問, 2 分。その中に, 補数計算 2 問。

 今の日珠連段位暗算検定は 6 桁揃 10 口 60 文字ということで, 文字数だけ見ると450 文字/分(7.50 文字/秒)と同じ難易度です。しかし, 全珠連の暗算検定段位の見取暗算が 290 文字/分(4.83 文字/秒)であることを考えると, そもそも日珠連の方の難易度が異常に高い, と言えなくもありません。

 このためでしょうか, 今回は満点 33 名, 140 点以上 50 名と, 暗算種目の中では最も人数が少ない結果となっています。

 ちなみに, この種目以降の暗算種目の間, 計算機部門参加者は休憩時間となります。とはいえ実際に暗算でやっている選手の邪魔はできませんから当然席を立ったりはできず, おとなしく座って待つことになります。

(6) 乗暗算

 実・法合わせて 6 桁の問題を 30 問, 1 分 30 秒。すべて整数問題。

 例えば

 123×456

 3,141×97

 6 桁の数字を 30 個書くだけで普通の人は 1 分は掛かりますから, 答えを書いてから 1 秒以内に次の問題の答えを書き始める, という状態でようやく終わる問題量です。

 とはいえ, 日珠連段位暗算検定と同等のレベル(2011 年に問題改訂となる以前のもの)なので, この大会の問題としてはこれまた低レベルの問題となっています。

 実際今回, 満点 50 人, 140 点以上 82 名でした。

(7) 除暗算

 法・商合わせて 6 桁の問題を 30 問, 1 分 30 秒。すべて整数問題。

 例えば

 248,454÷258

 665,475÷7,005

 乗暗算で先述のような状態ですから, この種目がどのような状態になるかは想像するに難くありません。実際今回, 満点だけで 118 名(!), 140 点以上 141 名という, 半数以上が満点という恐ろしい結果となりました。


 以上ですが, すみません, 文章中大量に「簡単」などと書かれていますが, あくまでもこの全国大会としての難易度です。普通にそろばんを学んでいる方々にとっては, 最後の除暗算でも「1 分 30 秒で 30 問!? ムリ!」であることは重々承知しています。気分を害された方がいたなら, 申し訳なく思います。

 ただ, 全国大会のレベルを多少なりとも体感して欲しく, このような表現を使わせていただきました。ご了承下さい。

 今回の記録ですが, 以上 7 種目を 1,050 点満点で争ったこの総合競技。

 個人の部の優勝は, 大関一誠選手, 1,050 点満点でした。このような嫌らしい(?)作問にもめげず満点を取るというのは, 並大抵のことではありません。

 なお, 2 等(3 名)には, 1,040 点で若松尚弘選手が入っています。

 団体の部は, 優勝の得点が 3,120 点(1,045 点, 1,045 点, 1,030 点)。4 位に一條珠算塾A(大関, 若松, あと 1 名)が入っており, その得点は 3,045 点でした。

種目別競技

 個人総合競技の各種目で 140 点以上の者が出場権を得る, まさに全国一のスピードと正確さを競う競技, それが種目別競技です。

 例年は, 百分の一秒まで計測出来る, クイズ番組さながらの早押しボタンによって競技が行われていましたが, 今回はこの競技への出場者全員で一気に争われました。だからといってそのレベルが落ちたとかそういったことはないかと思います。ここで, 今回の大会で出された記録をお伝えします。

 さて, 今回の種目別競技は, 1 種目毎抽選によって「通常点」か「ストップ点」かが選ばれてから競技がスタートしました。通常点は何の変哲もない, 1 問 1 点での採点です。ストップ点とは, 例えば 5 問目で間違えたら 6 問目以降は採点しない(ストップ)というルールで, 1 問目からの連続正解 1 問につき 1 点での採点となります。

(1) 乗算

 乗算は, 通常点で争われました。問題量は 20 問, 制限時間 1 分です。

 もともとは, 5 分で 30 問でしたから, 1 問 10 秒のペースで終わる競技でした。そろばん経験者ならおわかりかと思いますが, これでも常人では到底終わらない……つまり, 全珠連の十段レベル(桁数こと若干異なりますが, 7 分で 30 問です)では終わらないレベルのスピードです。

 普通に考えて, 30 問が今回 20 問になっただけですから, 同じスピード(それでも高速ですよね)で計算したとしても 3 分 20 秒は掛かる計算になります。逆に考えると, 1 分では 6 問しかできないということになります。

 さて, 今回の記録。優勝:17 点, 準優勝:16 点, 3 位:15 点(2 名)という記録でした。もちろんこの方々にとっては, 制限時間 5 分の総合競技も制限時間 2 分で満点取れてしまうレベル, ということになります。

 というよりも, この乗算は答えが 11 桁。もちろん小数問題もありますから若干数字の数は減るでしょうが, 平均して 9 桁としても, 17 点取るには 153 文字書いた計算になります。これを 60 秒で割ると, 1 秒で 2.55 文字です。実際にはコンマや小数点も書きますから, もう少々スピードが必要でしょう。

 ここで問題とその解答を持っている方は是非チャレンジして欲しいのですが, 1 分で全力で答えを写したとして何問書けるのか。これをご覧になっている殆どの方は, 17 問問も書くことすらできないかと思います。

 そう, 数字を速く正確に「読めるように」書くこと, これもそろばんの達人の方々習得している技術なのです。

(2) 除算

 除算は, ストップ点で争われました。問題量は 20 問, 制限時間 1 分です。

 普通に考えると, 乗算よりも除算の方が素早く答えを書くことができますが, そこは「ストップ点」。間違えたら終わりというプレッシャーが, 選手の手を遅らせることになります。

 今回の記録は, 優勝:13 点, 準優勝:12 点(若松尚弘選手), 3 位:10 点でした。

 多分, 通常点なら満点近く行くという選手もいるでしょう。何故なら, 総合競技で述べたようにこの除算は恐ろしいほどの微妙な端数処理の問題が含まれているので, 場合によってはそういった問題は「直感で」最後の桁を書いて最後まで書き続ける, という技が通用するからです。しかし今回はストップ点。この「直感」で間違えると以下採点してもらえませんから, こういった問題にも律儀に対処する必要があるのです。

(3) 見取算

 見取算は, 通常点で争われました。問題量は 10 問, 制限時間 1 分です。

 これは説明不要でしょうか。

 今回の記録は, 優勝:7 点(2 名), 3 位:6 点(13 名!)でした。もちろん, 6 点 13 名はその後同点決勝を行い, 3 位となる 1 名を決定しました。

 1 分で 7 問正解となると, やはり本来の 15 問だと 2 分程度ということになります。計算スピードを計算した数字の数で言いますと, 840 文字/分 以上, 14 文字/秒 以上のスピードで計算したことになります。

(4) 伝票算

 伝票算は, ストップ点で争われました。問題量は 10 問, 制限時間 1 分 6 秒です。

 これも説明不要でしょうか。

 今回の記録は, 優勝:7 点, 準優勝は 6 点(2 名)でした。

 伝票算の場合, やはりその肝となるのは「めくり」のスピードでしょうか。1 問を 3 回に分けたと仮定すると, 7 問正解するには 315 枚以上めくった計算になりますので, 5.25 枚/秒以上のスピードでめくり続けたことになります。

 私の予想だと, それはさすがにキツい選手が多いと思われ, 2 回に分ける選手も多いことでしょう。すると 3.5 枚/秒以上のスピードが必要です。やってみるとわかることですが, これでも難しいことです。

 ちなみにここまでは, 計算機部門からの出場者もいました。通常, 全珠連の十段程度のレベルだと, 乗算や除算は計算機の方が速く, 見取算以降はそろばん式暗算の方が速いのですが, この大会のレベルになると全種目暗算の勝ち。「電卓を叩く時間」はまったく存在しません。

(5) 見取暗算

 見取暗算は, ストップ点で争われました。問題量は 10 問, 制限時間 24 秒です。

 ここからは暗算種目。更に恐ろしい超速の戦いとなります。

 今回の記録は, 優勝:6 点(2 名), 3 位:5 点(14 名)でした。もちろん, 通常点ならあと 1~2 点高かったか可能性もあるかと思います。

 それでも, 今回の記録でも 4 秒で 1 問のペース。通常の総合競技の倍速以上。計算した数字の数で言いますと, 15 文字/秒 以上のスピードです。

(6) 乗暗算

 乗暗算は, ストップ点で争われました。問題量は 20 問, 制限時間 18 秒です。

 今回の記録は, 優勝:12 点(2 名), 3 位:11 点(7 名)でした。18 秒で 12 点って, 1 問 1.5 秒で計算した, いや「書いた」ことになります。この種目, 答えは 6 桁, もしくは 5 桁ですから, コンマのことも考えて 1 問 6 文字として計算すると, 1 秒間で 4 文字書き続けたということになります。

 そう, このレベルになると, そもそも 6 桁程度の乗暗算や除暗算は「一目で」答えは出てしまい, その結果そろばん種目よりも「数字を書くスピード」による勝負となるのです。

(7) 除暗算

 除暗算は, 通常点で争われました。問題量は 20 問, 制限時間 18 秒です。

 予選通過がそもそも 141 名もいただけあって, 最も「点数の取りやすい」種目。その予想通り, 1 問を 0.9 秒で書き続けなければならないこの競技ですが, 何と 20 点満点が 11 名も出てしまいました。恐ろしいことです。

 というわけで, この 11 名による決勝が行われました。そのレベルは, 問題量 20 問(変わらず), 制限時間 10 秒(!)というものでした。

 その結果, 優勝:12 点(大関一誠選手), 準優勝:11 点, 3位:11 点(若松尚弘選手)でした。11 点は他に 2 名いましたが, 更に再度決勝を行った結果の順位となっています。

 えぇ。普通, そんなに書けませんて。

応用計算競技

 今回は, 応用計算競技, 読上算競技, 読上暗算競技についてお伝えします。

 読上算や読上暗算は, 多くの大会で取り入れられている競技ですが, 応用計算を取り入れている大会は最近ではとても少なくなりました。

 応用計算競技は, まず全員で予選を行います。これは, 旧国民大会の応用計算を, その難易度を更に多少高くした問題で行われてます。予選は, 15 問を 7 分で行われました。

 問題は転載禁止なのでそのまま掲載するわけにはいきませんが, いわゆる「商業計算」の問題です。問題の種類のみ列記すると

(1) 手形割引 ~ 手取金を求める問題。

(2) 仲立人 ~ 売り主が支払った手数料を求める問題。

(3) 複利法 ~ 負債をいま一括で返還する場合に支払う額を求める問題。表利用。

(4) 換算 ~ ユーロを円に換算する問題。

(5) 複利法 ~ 複利利息を求める問題。表利用。

(6) 減価償却 ~ 定率法で, 第3期末償却額を求める問題。

(7) 単利法 ~ 元利合計から貸し付け金額を求める問題。

(8) 換算 ~ ドル/米t を 円/kg に換算する問題。

(9) 投資 ~ 手数料込みで株券の支払総額を求める問題。

(10) 複利計算 ~ (3)と同じだが, 端数期間がある問題。表利用。

(11) 売買損益 ~ 見込利益, 割引率, 損失額から定価を求める問題。

(12) 手形割引 ~ 額面金額, 支払代金から買入価格を求める問題。

(13) 売買損益 ~ 原価, 諸掛り, 見込利益率, 値引率・額から, 全体の利益額を求める問題。

(14) 複利法 ~ 積立目標額から毎期の積立金を求める問題。表利用。

(15) 売買損益&換算 ~ 仕入量(yd), 諸掛り(円), 売価(円), 利益額(円)から, 単価($/yd)を求める問題。

 予選通過ラインは, 140 点以上は無条件通過, 130 点以上が(予選通過のための)決勝を行い, 最終的に 11 名の決勝戦出場者が選ばれました。

 ちなみに私は, 予選 100 点でした。残念!

 応用計算競技の決勝は, 観客の前に 11 名が横 1 列に並ぶ形でセッティングされての進行です。ちなみに, 決勝進出者は自動的に 3 等までの入賞が保証されています。あとはその順位の決定を行うことになります。

 1 問ずつ問題が配付され, それぞれ異なった制限時間で問題を解き, 正解する毎に 1 ポイントが与えられます。最初に 5 ポイントを取った選手が優勝, その時点での得点により 2 等と 3 等を決定します。

 なお, 決勝の問題は観客にもすべて配られ, 「えーっ, この問題をこの時間で!? 無理!」などの声が聞こえてきます。この辺りも, 観客にも配慮した競技進行を感じ取ることができます。

 1 問目は, 複利法の問題。1 期毎の年金積立額から年金の終価を求める問題, 表を利用します。単純に表の値から 1 を減じた数値に積立額をかけ算するだけという簡単な問題ですが, その制限時間は 25 秒。小数第 1 位が「.5」となる問題だったものの, 焦らず計算すれば大丈夫と思われる問題でした。

 結果は, 7 名が正解でした。1 問毎, 簡単と思われる問題でも制限時間がプレッシャーとなる厳しい競技です。

 2 問目は, 投資の問題。償還年数, 利率, 買入価格から, 単利最終利回りを求める問題です。これは, 買入価格が 100 円を超えているちょっとひねった問題で, 制限時間 20 秒ということもあり, 難しいだろうと思われた問題でした。

 結果は, その予想通り正解者はたったの 1 名でした。

 3 問目は, 売買損益の問題。原価, 利益額から諸掛込原価を求める問題。条件が少なすぎると思ったら, 「諸掛り, 値引き額, 販売後の利益額が同額」というひねった条件が追加されていました。しかしよくよく考えると, この最後のひねった条件が肝で, パズルのような「気付けば殆ど計算不要」という問題です。

 制限時間 25 秒, この中でこの「パズル」に気付けば一発で正解できましたが, 正解者は 2 名だけでした。正解発表の直後, 選手から「あぁ!」という感嘆とも悲痛(?)とも受け取れる声が聞こえて来ました。

 4 問目は, 複利法の問題。元金から利息を求める問題, 表を利用しますが, 端数期間もありますから計算は面倒です。制限時間は 35 秒でした。

 結果は, 正解者 5 名。制限時間に救われた選手も多かったようです。

 5 問目は, 減価償却の問題。定額法で, 第 10 期末原価償却累計額を求める問題, 表を利用します。一見簡単そうですが, 「残存価格 0 %」「毎期償却額の 10 円未満切り捨て」という 2 重の罠が敷かれていました。制限時間が「ふつう」ならもちろんそんなこと気付く選手ばかりですが, その制限時間が何と 12 秒, 鬼のようです。

 結果は, 何と正解者ナシ。制限時間さえあれば……

 6 問目, 単利法の問題。元金と利息から, 貸付期間を求める問題。これまた制限時間さえあれば何とかなる問題ですが, この逆算問題でまたもや制限時間 12 秒。この大会, ホントに鬼です。

 結果は, 正解者 1 名! この時点で, この 1 名の正解者が 5 問正解にリーチとなりました。先程の 5 問目以外, 全問正解していることになります。

 7 問目, 手形割引の問題。普通に手取金を求める問題でした。制限時間は 22 秒。

 結果は, 7 名が正解。ここで, 先程リーチだった選手の優勝が決定, 競技を終了しました。

 2 等は 3 点以上の 3 名でしたから, 如何に優勝者がダントツだったかがわかります。なお, その 3 名の中には大関一誠選手が入っています。以下, 残りの 7 名が 3 等でした。

読上算競技, 読上暗算競技

 次は読上暗算について。その次にお伝えする読上算競技も含め, 読上種目は「一算落とし」にて争われます。「上位先決」な大会が多い中, 1 問も落とせない正確性と緊張感に打ち勝たなければならない一算落としによる競技もなかなか良いものです。

 しかし, ここは恐ろしいレベルの選手が集う全国計算競技大会。一応「予選」と銘打った最初の 3 問が存在するのですが, はっきり言って飾りのようなものです。2 問以上正解で予選通過, とは言うものの, 一応一瞬だけ挙手をさせて確認もせず決勝に進みます(笑)。ちなみにその 3 問とは, 3 桁加算, 3~4 桁加減算, 3~5 桁加算でした。まぁそれでも, 1 問もできずに選手が暇することを防止した, これも選手のことを配慮した措置, ということなのでしょう。

 席替えも何もなく, そのまま決勝に進みます。ここからが鬼。1 問 1 桁のペースで桁数(レベル)が上がっていきますから, 9 問目には 5~11 桁(15 口)になっていました。この時点で(連続)正解者 8 名, 入賞枠が決定です。

 10 問目は初めて同じ桁数である 5~11 桁加減算でした。ここで 4 名が脱落, その 4 名が 3 等に決定です。この中には, 若松尚弘選手が入っています。

 残り 4 名での 11 問目は, 5~12 桁加算。ここで 2 名が脱落, その 2 名が 2 等に決定です。

 残り 2 名による 12 問目は, 5~13 桁加算。ここで優勝が決まり, 不正解だった方は 2 等となりました。

 読上暗算, ものの 10 分程度で終わったかと思います。恐ろしい競技スピードです。

 次は読上算です。予選は, 4~7 桁加算, 5~8 桁加減算, 5~9 桁加算の 3 問で, 2 問以上が予選通過ですが, 読上暗算同様の「スルー」進行です(笑)。

 こちらも 5~10 桁加算, 5~11 桁加減算(いきなり補数計算でした)と上がっていきましたが, 読上暗算よりはできる選手が多く, 読み手と選手の勝負, といった感じでした。

 7~13 桁(15 口)加減算 56.0 秒で, たったの 7 名が正解。途中でいやらしい位の繰り上がり, もしくは繰り下がりがあったらしく(筆者はこのレベルでもできませんので詳細はわかりません), 読みのスピードも大したことはなかったものの一気に脱落した瞬間でした。

 入賞枠があと少々あるということで, この問題以前まで全問正解だった選手による敗者復活です。7~13 桁加算 51.0 秒, 7~14 桁加算 47.8 秒, 7~14 桁加減算 46.1 秒とスピードが上がっていき, ここで 2 名だけが正解し, 3 等入賞の 2 名が決定しました。この 2 名の中に, 大関一誠選手が入っています。

 ここでさきほどの 7 名の順位付けが再開です。7~14 桁加算 37.3 秒という超速問題で 2 名正解, このどちらかが優勝というところまで決まりました。不正解の 5 名も, 全員を 2 等にしても 3 等にしてもアンバランスのため, 競技を続けます。

 7~14 桁加減算 46.0 秒, 加算 36.6 秒と正解者が出ませんでしたが, 加減算 45.5 秒で, 不正解組 5 名中 1 名が正解して, この選手の 2 等が決定です。

 次の問題から 7~15 桁にアップ, 加算 44.8 秒で, 不正解組残り 4 名中 1 名が正解し, この選手も 2 等に決定, 不正解組で残された 3 名が 3 等となりました。

 あとは優勝を賭けた 2 名による一騎打ちです。加減算 48.4 秒, 加算 41.5 秒, 加減算 43.1 秒と両者正解が続き(恐ろしい……), 読み手の意地による加算 35.3 秒(!)は両者不正解。そして加減算 43.1 秒で遂に優勝者が決定しました。多少時間が掛かりましたが, この一騎打ちは非常に見応えがあり, 1 問毎に両者が正解の挙手をしたり, しなかったりの度に「おぉ!」という声が聞かれました。

団体特別競技, 個人特別競技

 最後は, 団体特別競技, 個人特別競技についてお伝えします。

 ……と言いたいところですが, 個人特別競技は大会中その競技が始まるというときにようやくその内容を知らされるというものですから, ここでは紹介しないことにします。ちなみに今年は, 「鏡から見た数字」や「裏からみた数字」, 「ひっくり返った数字」などによる乗暗算, 除暗算, 見取暗算競技でした。簡単そうでめちゃくちゃ難しかったです……

 というわけで, 以下団体特別競技についてお伝えします。これまでの 4 回とはちょっと毛色の異なるレポートとなります。

 私(たち?)が本命とみていたこの競技。個人総合競技ではまったく歯が立たない私たちでもコッソリ優勝を狙えると睨んでいました。団体 3 人の協力体制がものを言う, スピードだけで勝負が決まるわけではない, ないなかなか楽しい競技です。

 問題は封筒に入っています。封筒の中には, 問題用紙 3 枚, そして小さな解答用紙 1 枚が入っています。「用意, 始め!」という恒例の合図と共に問題を出し, チーム内で 3 枚の問題を分け与えるところから, この競技はスタートします。

 問題用紙 3 枚は A, B, C となっていて, それぞれ数字が違う問題となっています。A, B, C それぞれの最終的な答え 1 つずつを小さな解答用紙に記入し, その 3 つの数を足したり引いたり(指定されています)した 1 つの答えが最終的に計算され, この答えのみ審査することとなります。

 この答えを記入したら即座に挙手, 会場の担当の先生がやってきて, 正解なら「ご名!」(「ごめい」=「ご名算」の略)と叫んでくださり, ステージ上から順位を言われます。不正解なら「バツ!」と叫ばれ, やり直しです。

 最後の答えのみ審査されるので, 誰のどの答えが間違えているかまったくわかりません。正直, 一度バツを喰らったら最後, 最初からやり直すハメに遭います。もちろん, 「この辺りが怪しい」とヤマを張ってやり直すことも可能ですが, それで即座に直すことができるというのは相当運が強くなければ無理でしょう。

 さて, 1 枚の問題用紙の内容もなかなかヘビーです。個人総合競技と同じレベルの乗算 5 問, 除算 5 問, 伝票算 2 問, 見取算 2 問, そして応用計算 2 問が印刷されています。一見簡単そうですが, それぞれの問題が連動しています。

 乗算 5 問の答えを, 足したり引いたり(指定されています)し, 「乗算の答」を算出します。練習を開始した当初は, この「足す」と「引く」を良くみていないことによる間違えも多々ありました。

 除算 5 問の答えも乗算同様足したり引いたりし, 「除算の答」を算出します。

 伝票算 2 問は, それぞれ「伝票算の答A」「伝票算の答B」となります。

 見取算 2 問には, 1 問につき 2 ヶ所, 計 4 ヶ所の空欄があり, それぞれ「乗算」とか「除算」, 「伝票算A」「伝票算B」と書かれています。そう, ここにその数値を入れないと, 見取算を開始できないワケです。

 最後の応用計算 2 問にも, それぞれ空欄が設けられており, それぞれ「見取算A」「見取算B」と書かれています。もうおわかりですよね? その数値がなければ応用計算を開始できない仕組みなのです。

 途中で間違えたら以下すべて間違うことになりますから, どの計算も一発で 100 %正解できる実力が必要(=一発で正解できるギリギリのスピードで計算することが必要)となります。

 最終的に, 小さな解答用紙の答さえ合えば良いので, ぶっちゃけて言いますと 1 人で 3 枚計算しても良いのです。過去には, 2 人チームで優勝したこともあるそうです。しかし, 正確ささえあれば 3 人チームが最も有利であることは間違いありません。

 しかしそこには作戦も必要です。例えば私のチームの場合, 中学生 1 人と, 私を含めた大人 2 名の計 3 名によるチームだったのですが, 中学生は応用計算が不得意。よって, 最初に封筒から問題を出した時点で最も応用が易しいものを彼に渡すことにしていました。

 次に, 私の伝票算の悲惨さにも定評がありました。よって, 私は伝票をやらない作戦を立て, 練習していました。具体的には, 私が「乗算」(時間に余裕があれば「除算」も), もう一人の大人が「伝票算」を行い, できたら問題用紙を交換。私が既に「伝票算」の答えが記入されている問題の残りを, もう一人が「乗算」(+「除算」)の答えが記入されている問題の残りを計算するという作戦でした。幸いなことに, 私が「乗算」 5 問を計算(ついでに合計を求める)する時間と, もう一人が「伝票算」 2 問を計算する時間には大差ありませんでしたので, それはなかなか私たちに好都合な作戦でした。

 5 分強という恐ろしいタイムで, 1 チーム手が上がりました。読上暗算優勝者を抱えるそのチームは, スピードでは間違えなく日本一の団体でしょうが, 結果は「ダメ!」。このチームの 3 名には失礼ですが, これだからこの競技は面白いのです。この後, 3 等入賞が決定しきるまでこのチームが再度手を挙げることはありませんでした。つまり, 間違えを発見出来なかったということです。本当に恐ろしい競技です。

 私たちは珠算塾の B チームだったわけですが, 大関選手や若松選手を有する A チームも「ダメ!」でした。本当に恐ろしい限りです。

 そういうしているうちに, 7 分以上経過しました。大抵, 私が小さな解答用紙を握ることになりました。計算スピードの関係もありますが, もう一人の大人の選手は計算が終わり次第隣の中学生の応用の確認をしていたのです。

 そろそろ終わるぞ! と思ったそのとき。高校生のチームが「ご名!」となりました。そのタイム, 7 分 59 秒。なかなかの好タイムでした。私たちの練習でのベストよりも速かったので, これは仕方がない結果だったように思います。

 そして私が答えを記入し, 挙手。会場の先生がやってきました。結果は「ご名!」, 見事一発正解。2 等に輝いた瞬間です。練習で立てた作戦が功を奏しました。特別競技とはいえ, 全国での入賞はやはり嬉しいものです。

 残念なことは, 多分挙手はこちらの方が速かったと思うのですが, 「ご名!」の声が速かったもう 1 つのチームが 2 等の 1 席になり, 私たちが 2 席となったことでしょうか。まぁ 2 等には違いありませんからヨシとします。タイムは 8 分 19 秒と 8 分 20 秒という, 当然の 1 秒差でした。ちなみにこの 8 分 20 秒というタイムは, 練習で出していたベストタイムと同じ程度でしたから, かなり良い結果だったと思います。

さいごに

 というわけで, この第 60 回全国計算競技大会は無事閉幕しました。こんなに素晴らしい大会, 参加するだけではなく見ている側も楽しい大会が幕を閉じることは大変残念なことです。

 しかし, 来年度以降も何とか大会を存続しようという動きがあるようです。その動きを信じつつ, 今回のレポートは終わりにしたいと思います。

 少しでも全国レベルのトンデモなさ, そして本大会の面白さなどが伝わっていれば幸いです。長々とお付き合いいただき, ありがとうございました。